【幻の名作】紅天女とは何なのか?【復活】
2021/12/02
ガラスの仮面のストーリーは大まかに言って
「マヤと亜弓の紅天女後継者争い」
「マヤと速水真澄の恋の行方」
の二つを軸に展開しています。
今回はその一軸、紅天女について考察して見ました。
紅天女とは
「紅天女」はかつて上演されていたお芝居で
主演:月影千草
作・演出:尾崎一蓮
で上演され一世を風靡しました。
しかし反社勢力にもにた団体から上演権を巡って圧力を受け尾崎一蓮は自殺、
彼の死後上演権を持っており、紅天女を演じる月影千草も
本番中の事故により女優生命を絶たれてしまいました。
その後長きにわたり上演されることはなく
「演劇界幻の名作」とまで言われています。
その魅力の前に多くの人物の人生のターニングポイントになっています。
尾崎一蓮 自殺
月影千草 再起不能
速水英介 紅天女を上演するために芸能社を立ち上げる
速水真澄 母は紅天女の犠牲になったような形で死去、自身の手での上演に執念を燃やす
北島マヤ 月影先生に見出され家出
月影メンバー スカウトされ上京するも即お払い箱
姫川亜弓 紅天女争いに加わったおかげで挫折
姫川歌子 紅天女に憧れていた
ざっと思い出しただけでもこれだけの人々の人生に影響しています。
ただ作中での描写を見る限り、
「そんなにおもろいのか」
と正直思ってしまいます。
しかしそれを面白く演じるのが役者。
「雨上がり」という「平凡でつまらない脚本」を
面白く演じた北島マヤの師匠月影先生だけに、
その絶大なる演技力が独特の世界観を醸成したのでしょうか。
月影千草その後
月影千草はその後隠居のような生活を送っていました。
横浜に豪邸を構え、使用人と暮らしていることから
生活面の心配はなかったようです。
「紅天女」の上演権を巡り訪れる人も多かったようですがもちろん却下。
そして雌伏のときを経て演劇研究所を設立、
紅天女の後継者を育成するべく東京都杉並区に拠点を構えます。
杉並区の「劇団つきかげ」は広い敷地に
多くのレッスン場や寄宿舎も構えたかなり広大な施設。
スポンサーの援助もあったようですが、
その運営には月影先生の資産も投入されたのでしょうか。
のちに劇団つきかげが解散し研究所を出た際には
マヤたちと6畳のアパートに同居
そのあとは病院やホテルを中心に暮らしています。
その生活費は月影先生が大都芸能系列の演技学校で講師を務めるほか
源造さんが何らかの稼ぎを得ているようです。
かつての付き人であり、運転手であり、執事であり、料理人であり、
大黒柱でもある、源造さん最高です。
紅天女の後継者
劇団つきかげには、募集を見て集まってきた生徒のほか、
月影先生自ら全国各地よりスカウトした有望な若者が集います。
マヤも月影先生の恫喝にも似たスカウトにより女優になることを決意。
授業料免除の特待生として入所します。
演技経験や実力に応じてクラス分けがなされるほどの人数が集まりましたが
男性も募集しているのが闇です。
のちに「紅天女育成のため」と知ってさっていく男性生徒もいます。
そして全国各地から集められた有望な若者も
演技未経験ながら絶大な才能を持つマヤの前では
早々に後継者争いからは脱落。
特待生として寄宿舎に入った仲間たちも早々に見切られ、
マヤには依怙贔屓にも似た英才教育が施され、
その他のメンバーは
「マヤを精神的にサポートする」
「マヤのかませ犬になる」
「ストーリー展開やお芝居の内容の説明要員」
「描写すらされない」
といった残念な扱いを受けます。
そして月影先生の鶴の一声により
敵対関係にある組織に所属している姫川亜弓が
「紅天女候補の一人」として指名され
マヤとその地位を争うことに。
そしてさらにはマヤは一時期干され
荒療治という名の下
「北島マヤが姫川亜弓と同じ芸術大賞か
もしくはそれと同格の
全日本演劇協会の最優秀演技賞を獲れなければ
紅天女の上演権は姫川亜弓に譲るものとする。
もし賞を獲ることができたら
北島マヤと姫川亜弓の両名に紅天女を競わせたのち
どちらか一方に決定したい」
という条件を突きつけられ
どん底から這い上がったマヤは
最優秀演技賞を獲得し、
紅天女争いは再度二人のマッチレースになります。
紅天女の復活とは何なのか?
ところで本作中たびたび
「紅天女の上演」「紅天女の復活」「紅天女を蘇らせる」
といったキーワードが出現します。
上演するだけであればさほどハードルは高くないでしょう。
しかしそれでは「演劇界幻の名作」の「復活・蘇らせる」にはあたらないということなのでしょうか。
では「紅天女を蘇らせる」条件とはなんなのでしょうか。
まずは資金面でしょう、
自主公演のような貧相な舞台ではなく
復活にふさわしい壮大な劇場、装置、そのほか設備を配した
豪華絢爛なステージが望まれます。
しかし前述のように月影先生、資金は枯渇しているようで
何らかの形で資金を引っ張って来る必要があります。
作中でもスポンサーとの接触を行なって
大都芸能に妨害されている描写があります。
そしてキャスティングや演出など
これも月影先生の意向が反映されていることが条件のようです。
尾崎一蓮は他界、そして月影先生の復活もない今、
月影先生が後継者と認めた女優が演じることが絶対条件なようです。
つまり、
「自分のやりたい芝居を、自分が選んだ役者やスタッフで
豪華絢爛なステージで、他人の金で上演する」
というのが「紅天女の復活」のようです。
無茶苦茶です。
さすが伝説の大女優にして紅天女。人の心を持っていません。
しかしそんな都合のいい話があるわけなく
結局全日本演劇協会預かりという形にして、
大都芸能をはじめとする上演権独占を企む各社の介入を防ぐことになりました。
この決定に至るまでには月影先生も相当悩んだらしく
相当な決心が必要だったようです。
まとめ
というわけで今回は話のキーとなる紅天女についてまとめました。
この話、作中で全てが描かれていないのですが
本当に面白い芝居なのか
その面白さがわかるにはまだまだ私は未熟なようです。