【演技力・指導力】月影千草の実力を考察してみた【演出力・経営力】
2017/04/16
ブログ創設以来、あらすじ紹介を中心に行ってきましたが、
今回は趣向を変えて見たいと思います。
伝説の大女優・紅天女でおなじみの月影千草。
月影先生は半ば引退しているためその女優としての実力は
回想シーンや数回の舞台、稽古などから推測するほかなく、
また、指導者としても罵詈雑言はあたりまえ、
鉄拳制裁も辞さないスパルタ教育であるため、
その資質は賛否両論別れるところではあります。
そこで今回は月影先生の実力を
「演技力」「指導力」「演出力」「経営力」などの視点から考察してみたいと思います。
圧倒的な演技力。死角は体力?
月影先生の演技力の凄まじさについては異論はないのではないのでしょうか。
紅天女として一斉を風靡、
速水親子の人生すらも変えてしまうほどの影響力を持ったかつての大女優。
作中で回想シーンを覗き月影先生が舞台に立ったのはわずか三回。
一つ目は、演劇コンクール全国大会「ジーナと5つの青い壷」で手のみの登場。
観客を絶叫させ、劇団一角獣のメンバーに
「手だけであれだけの恐怖を出すなんて」
と絶賛されました。
二つ目は、「二人の王女」の皇太后役。
大女優の本格復帰に恥じない圧倒的な存在感を見せつけます。
そして三つ目は紅天女のふるさとで見せた特設ステージでの「紅天女」
通常の舞台とは異なる自然のステージをバックに見事な演技を披露しました。
その実力は演劇界の大御所・栄進座の原田菊子とかつて芸を競い、
今をときめく大女優・姫川歌子の師でもあることからも紛れもないことが伺えます。
つきかげメンバーや亜弓に対する指導においても、
役づくりや役に向き合う姿勢といった演技の本質から
台詞まわし、ちょっと仕草や足さばきなどの細部のテクニックに至るまで
極めて細かく、厳しく伝えており、
演技者としての技術の高さと思考の深さをかいま見ることが出来ます。
とまあ、演技そのものにおいては非の打ち所のない月影先生ですが、
現役の女優としての泣き所は「体力」
ワンステージ終えるごとに吐血し、命の危険にさらされるとあってはたまりません。
また、事故により右顔面がえぐられているため、
仮面をかぶる等、役が限定されてしまうのも不利と言えるでしょう。
しかしその体力・役柄の不利を補っても余りある、絶大な演技力なのです。
演技の本質と技術の両面からのアプローチは秀逸だが、いかんせんスパルタ過ぎる
では月影先生の「演技の先生」としての指導力はどうでしょうか。
過去には姫川亜弓の母、姫川歌子を育て、
二人の紅天女候補を絶賛教育中の月影先生。
月影先生の演技指導の粋は、
「本質と技術の両面からのアプローチ」にあります。
役づくりや役に向き合う姿勢、さらには日常における芝居への意識などなど、
演技の根本、本質なども徹底的に指導します。
それが出来なければぼこられます。
「木になりなさい」→石の豪速球→「木がよけますか!?」
花瓶叩き割る→マヤよける→「あなたにはまだ目がある、耳がある!」
などなど、演技というよりもその本質・大前提などに重きを置いています。
また、日常において食事や生活、さらには恋なども芸の肥やしと考え、
全てが役者の道に続いていると教えます。
逆に稽古に於いては発声・台詞まわしや
表情・細かい仕草・足さばきなども細かく厳しく指導。
生徒が萎縮し、力尽きるまで熱烈指導を実施。
生徒が望むとあれば、自らの病を顧みず徹底的に向き合い、
「若草物語」ではマヤを物置に監禁した後、
真冬の寒空5日間ぶとおしでドア越しに稽古を行い、
ドクターストップがかかるまでマヤの役づくりにつきあいます。
一見根性論者の様ではありますが、
生徒達の欠点や課題をすぐに見抜き、
例えば自分本位な芝居をしがちなマヤには
台詞と動きを与えず、人形の役を与えるなど、
一人一人に合わせた臨機応変な指導も心得ている様子。
マヤが大都芸能に所属した際にはそのバーターとして?
プロの役者向けの演劇スクールの講師も務めており
その指導力には定評がある様です。
欠点は・・・怖すぎることでしょうか。
怒声・罵声は日常茶飯事。
鉄拳制裁・監禁など虐待にも似た行動はお手の物で、
義務教育たる中学校に行かせない、
寒空の物置に閉じ込めるなど、
刑事事件にも発展しかねない某ヨットスクール並みの指導を実施。
速水真澄と小野寺理事が初めてマヤに会った時には
「今度の犠牲者」とよぶ描写も。
過去には犠牲となり、芝居を人生を諦めた教え子がいたのでしょうか。
マヤ自身も自分だけにつらく当たる先生に疑問を持ったこともあり。
臨機応変な指導が反面、依怙贔屓ともとれるのも事実です。
ただしフォローする訳ではありませんが、
後にマヤが「忘れられた荒野」で黒沼の熱い演技指導を受けた際には
「私は月影先生で慣れてるから」とまで言わしめた。
月影道場を絶え抜いたものにはどんな厳しい環境でも乗り越えられる
根性が培われるに違いない。
結局根性かい。
そういえば姉弟子にあたる姫川歌子さんも
演技を「戦い」と捉えている節があり、
舞台「奇跡の人」ではマヤと壮絶なアクトバトルを繰り広げていた様な・・・
でも寄宿舎付きの特待生特権がなくなり、アルバイト中心の生活となっても、
5人の弟子がついてきたという結果が
月影先生の指導力を物語っていると言えるでしょう。
役者の力量をフルに生かした演出=役者次第では大崩れする可能性あり
では月影先生の演出力はどうでしょうか。
月影先生は「若草物語」「たけくらべ」「ジーナと5つの青い壷」などの演出を行っている様子。
(ちなみに演出の田代先生という方がいたのだが、月影先生の圧倒的な存在感によりイエスマンに成り下がった模様)
劇団つきかげにおいては「役者の育成」をテーマとした舞台が多いため、
役者の力量を生かした配役や演出を行っており、
その内容も「役づくり」「演技の技術」といった演技者としてのアプローチであり、
舞台全体の演出はあまり行っていない雰囲気が見られます。
よって役者の欠点や実力不足を演出によって補うのではなく
役者の力量がそのまま結果として出る場面が多い。
「若草物語」は青木麗とマヤの力量が目立ち、
「たけくらべ」はマヤの役づくりで勝ち、
「ジーナと〜」に至っては完全にマヤ任せ。
マヤを抜擢した慧眼は恐るべしですが、
マヤでなければ大崩れしたに違いなく、
その点では演出家としての力量は疑問符がつきます。
大手芸能プロをバックにつける政治力も、組織の解体を見抜けない見通しの甘さも。
最後に「組織のリーダー」としての経営力について。
劇団つきかげは当初は青柳芸能プロのバックアップを受けて発足した劇団であり、
その規模や資金量を考えると、相当大きなプロジェクト。
ここまでのプロジェクトを実現させた月影先生の政治力は大きいと言えます。
政治力という点では大都芸能の速水真澄を出し抜く場面もあり、
その機転や局面を掴む能力には長けていると言えます。
ただし組織のリーダーとしては弱点が多いのも事実。
最たる失敗は劇団つきかげの不穏分子を見抜けなかった点にあります。
マヤを重用するあまり、脇役に回った男性劇団員の不満が小野寺の調略を招き、
結果として劇団つきかげは解散に追い込まれます。
またマスコミによる報道があったとはいえ、
紅天女を前面に押し出したが為に、劇団を去る者がいたことも事実。
そう考えると劇団つきかげの縁の下の力持ちはやはり「源造さん」だったのではないでしょうか。
「運転手」「執事」「料理担当」などの雑務をさらりとこなし、
劇団解散の際には収入を得る為に奔走し、
紅天女のふるさとでは、巧みな演技を披露。
マルチバイプレイヤー・源造さんが資金面や運営面に於いて辣腕を振るった姿が想像されます。
しかしながらそんな源造さんが何十年にもわたり、
「恩に報いる為」と
月影先生の影として慕っていることから
月影千草のカリスマはやはり絶大なものなのではないでしょうか。
まとめ
以上、今回は月影千草の実力について考察してみました。
やはり役者としての実力、指導力は抜群ながらも、
全体を見渡したり、組織を運営する能力は劣るあたり、
女優さんと言った感じがします。
「名選手が必ずしも名監督ではない」
というのと似てる、いやちょっと違うか。
そんなカリスマ抜群の月影先生をこれからも応援して行きたいと思います。