「嵐ヶ丘」ガラスの仮面・劇中作品データ
東洋劇場「嵐ヶ丘」
出演:
キャサリン:夏江梨子
ヒースクリフ:加川英明
キャサリン(少女時代):北島マヤ
ヒースクリフ(少年時代):真島良
演出:沢貴先生
演出補:村瀬先生
企画部長:鈴村さん
栄進座の「おんな河」では端役ながらとてつもない存在感を発揮。
大御所・原田菊子から「舞台あらし」の異名をゲットしたマヤであった。
栄進座の客席にいた和服の紳士がマヤの存在感に注目。
そして後日、マヤの元にオーディションの参加依頼が来たのだった。
作品は「嵐ヶ丘」、和服の紳士は東洋劇場の会長であった。
あらすじ
世界的名作のため、省略。
オーディションという名の出来レース
嵐ヶ丘の主役、キャサリンの少女時代役のオーディションに参加したマヤ。
マヤと同世代の女子二人も参加。
うち二人はヒースクリフの少年時代を演じる真島良の恋人、絵川由紀であった。
オーディションでマヤは、演出家の先生方や共演者を唖然とさせる。
「キャサリンの仮面をかぶれなかった・・・」
と反省するほどの出来栄えであった。
しかし、東洋劇場会長のツルの一声でマヤの起用が決定。
これには「可能性」という曖昧な言葉を理由にしなければならない
演出人にとっても不本意な人選であった。
東洋劇場のワンマン体質が見て取れる。
キャサリンをつかんだマヤ。しかし。
なかなかキャサリンの役がつかめずに苦戦するマヤ。
しかし偶然出会ったカズオ君と遊び、
マヤが帰るときに泣き叫ぶ姿をヒントにキャサリンの仮面をゲットする。
その仮面の出来は思いの外良く、
稽古時には共演者を驚かせ、
恋人持ちの真島良を魅了し、
客席の桜小路優を嫉妬させ、
マヤの演技に引っ張られた真島良の演技に絵川由紀も不安になる。
そしてキャサリンの大人時代を演じる夏江梨子を上回る存在感を放ち、
夏さんも稽古の時から千秋楽まで心穏やかではない。
舞台あらしの本領発揮であった。
関係者全員を不安に陥れるも、
洗練された夏江梨子以上の情熱と存在感で観客を魅了。
少女時代と大人時代のギャップを感じさせながらも千秋楽を迎えたのだった。
どさくさの紅天女指名
マヤが嵐ヶ丘の舞台を迎えた初日から数日間の間に
実は物語を大きく左右する出来事が起こっている。
嵐ヶ丘初日終演後、マヤは月影先生の容態が急変したことを知る。
何度目かの死ぬ死ぬ詐欺である。
そして再起は絶望と思われたもののマヤの呼びかけによって目を覚まし
どさくさに紛れてマヤを紅天女後継者候補の一人に指名したのだった。
なぜこのタイミングだったのか。
月影先生はもう自らの寿命が短いと思い、
ラストチャンスとばかりに指名したのだろうか。
その割にはこの後元気に舞台の稽古などをしているようである。
嵐ヶ丘のMVP
嵐ヶ丘は多くの劇評にて好評を博した。
中でもキャサリン少女時代を演じたマヤの評価は高かった。
しかし稽古から本番全公演に至るまで、
マヤに殴られ、蹴られ、噛まれ、
便乗してヒートアップしたヒースクリフにも殴られた
ヒンドリー役の彼。名前は知らない。
サンドバック状態の彼の頑張りと体の頑健さがマヤの好演を引き出したとも言える。
特に初日、マヤの暴力に対して熱くなった彼はヒースクリフを本気で蹴ってしまい
流血するほどの怪我を負わせてしまう。
そこで衣装を引き裂き止血するというマヤのアドリブが飛び出し、
観客は感動し、真島良は勘違いする。
ヒンドリー役の彼こそ、この作品のMVPと言えるであろう。
東洋劇場の腐敗体質
夏江梨子、加川英明といった実力のある俳優陣を起用した東洋劇場。
しかしどうも会長のワンマンによる腐敗体質が目にあまるものがある。
キャスティングに際しても演出家の意見は無視されマヤを起用。
稽古や本番中においても演出家スタッフの意見がない、もしくは届かない雰囲気が感じられ、
少女時代のマヤと、大人時代の夏江梨子のキャラの変貌の異様さには全員が気付いていたにもかかわらず、
稽古中にも本番中にも修正されることがなかった。
千秋楽のあと、会長は緊急会議を開き、
マヤの独りよがりの芝居を
「舞台に出すべき人物ではない」
「舞台が荒らされる」
と酷評する。
しかしながら、その調整を行うのが演出家の仕事であり、
そしてその演出家の意見を無視してマヤを起用したのは会長自身。
にも関わらず、一方的にマヤを戦犯扱いするあたり理不尽である。
無能なワンマン権力者と、それに雷同するイエスマンたち。
現実の世界においても良く見る腐敗の構図であると言える。
まとめ
この嵐ヶ丘は、マヤが初の大役にて名を売った以外には、これといったきっかけにはなっていない。
むしろ本番中に紅天女後継者候補に指名されたことが大きなターニングポイントであろうか。