「夢宴桜」ガラスの仮面・劇中作品データ
出演:
海堂寺月代 姫川亜弓
海堂寺千絵(代役) 北島マヤ
海堂寺鏡子 安っちゃん
海堂寺歌彦 文ちゃん
そのた大都芸能の看板役者多数
演出:大田先生
劇場:大都プラザ
母親が行方不明になったことを聞き、東京中を歩いて探し回るという暴挙に出たマヤ。
もちろん見つかるはずもなく、外は雨。
疲れ果て雨宿りしていたのは偶然にも大都プラザ劇場であった。
大都芸能の看板役者たちが多数出演する「夢宴桜」の開演直前。
一人の役者が怪我をしてしまい、急遽代役をさがしているところであった。
劇場前で雨宿りしていたマヤを速水若社長が発見。
代役としての出演をオファーしたのだった。
本番一時間前の代役に不安がる共演者たち。
さらには、華族の令嬢役として出演、好評を博している姫川亜弓との初の競演であった。
あらすじ
時は明治、鹿鳴館華やかなりし時代。
海堂寺男爵一族の盛衰を描いたドラマ。
とだけ説明されている。
姫川亜弓は男爵の孫娘、月代を演じ、
マヤは海堂寺男爵の五男、放蕩息子の行比呂が芸者との間に作った娘、千絵を演じる。
華やかな従姉妹の月代と比較し、
肩身の狭い孤独な人生を送ってきた少女である。
北島マヤ、舞台あらしの本領を発揮
北島マヤはなかなかの有名人である。
大都芸能の速水真澄にその実力を認められ(いろんな意味で)
演出の大田先生も全日本演劇コンクールや東洋劇場の「嵐ヶ丘」で知っている。
共演者たちもその名前を聞いただけで、
月影千草の弟子にして紅天女候補、
アクシデントの中一人で舞台を演じきり、
観客投票で一位となったその伝説や、
嵐ヶ丘や石の微笑での武勇伝の数々を噂されている。
狭い演劇界ではその名をとどろかせ始めているということか。
さらには「舞台あらし」の異名に恐れをなした共演者の策略により、
台本をすり替えられるというとばっちりを受ける。
しかしさすが北島マヤ。
誰かが話し掛けようが、楽屋の電話が激しく鳴ろうが気づかない集中力。
30分ですべての台詞を覚えきり、
十分に稽古を積んだはずの共演者を自分のペースに巻き込み、
挙げ句の果てには、台本がすり替えられストーリーも台詞もわからないにもかかわらず、
舞台に出て姫川亜弓のリードを得ながら舞台をつなぐという快挙。
まさに舞台あらしの本領発揮である。
北島マヤと姫川亜弓、初の競演。その勝敗は?
当初マヤと亜弓はさほど芝居上の絡みはなかったようである。
(真のあらすじを知らないため不明)
しかしながら共演者の策略により台本をすり替えられてしまい、
丸腰で舞台に出たマヤ。
あくどい共演者たちの攻撃を「無言の芝居」でいなす。
その反撃になすすべもなく固まってしまった共演者たちを見て、
出番でもないのに舞台へ登場する亜弓。
そして舞台を正しいあらすじへと導くべく、
オールアドリブにて芝居を進めていくのだった。
状況や登場人物の説明、千絵の境遇、
そして千絵としての気持ちを揺さぶるべく挑発するような台詞や芝居を織り交ぜ、
そして最終的には猛烈なビンタをかましてもっとも重要となる
「もうこんな家出て行ってやる!」
という台詞を見事、マヤの口から引き出したのである。
芝居全体のあらすじや伏線を把握し、
自分や共演者の境遇やキャラクターを踏襲した上で、
全てアドリブにて芝居をつなぐという姫川亜弓ならではの離れ業である。
マヤは自分が台本すり替えの被害者というハンデがあるにもかかわらず、
姫川亜弓の天才ぶりに打ちのめされ、
さらには血筋や金持ち、才能、美貌といったものにまで嫉妬し、
激しい敗北感に見舞われる。
しかしながらこれはある意味で、
これまでは憧れの対象でしかない、雲の上の人だった「姫川亜弓」が
初めてマヤの相手として立ちはだかった瞬間とも言える。
そして今回のMVPともいうべき姫川亜弓も、
自分は舞台のあらすじを知っていた分だけ有利だったにすぎないと評し、
マヤの舞台度胸、芝居の嗅覚を認め
「互角」と言い切ったのだった。
大丈夫か!?大都芸能
しかし驚くべきは大都芸能である。
「看板役者を集めた」というにもかかわらず、
目立っているのは男爵役のおっさんと、令嬢役の姫川亜弓のみ。
その他の連中は北島マヤの「舞台あらし」の異名に恐れをなし、
あるものは舞台上で自らのペースを乱し、
そして安っちゃんと文ちゃんという共演者は
台本すり替えという悪事に手を染める。
犯行の動機は「舞台あらしに食われる前に食ってやろう」という
自分が他人より目立てばよいという勝手な理由であり、
芝居全体の展開や成功については何一つ危惧していない。
その証拠に、台詞も筋立ても知らないマヤの無言の芝居であっけなく食われ、
二人が芝居を飛ばしてしまったかのような空気に包まれ。
姫川亜弓の緊急登板により救われる始末。
やはり小野寺理事の様な策謀に満ちた邪悪な事務所だけに、
その役者陣も小賢しい策略に走ってしまうのだろうか。
末端の役者もさることながら実質トップの速水真澄。
役者の怪我により、急遽代役として北島マヤにオファーしたのは最善策である。
しかしながら台本すり替えというアクシデントに対して
誰よりも取り乱し、挙げ句の果てには「舞台を止めろ」とまで言う始末。
演劇をビジネスとしている大企業のトップにあるまじき発言である。
そして今回のMVPは秘書の水城冴子さん。
上記のごとく取り乱した若社長を、衆目のある中一喝し、
辱めを受けさせるというなかなかのドSっぷりを披露。
そして舞台が終わり、今日のハプニングなど何事もなかったかの様に忘れ、
バーで気持ちよく飲んでいる速水真澄に対して、
数時間前の狂乱を蒸し返し、
速水真澄の必死の言い訳も笑ってスルー。
さらには速水真澄のロリコン疑惑を見抜いた発言。
やりたい放題である。
大丈夫なのか?大都芸能。
おわり。