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アラフォーのおっさんがガラスの仮面を読んで聞かせる

「王子とこじき」ガラスの仮面・劇中作品データ

      2016/09/24

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フジナガ製菓提供・名作舞台劇
出演:
王子・こじきの二役 姫川亜弓
その他 劇団オンディーヌのメンバー
原作:マークトウェイン
演出:不明
劇場:フジナガホール
主な観客:記者・評論家多数・その他観客多数
客層:親子連れ、幼児から小学生主体

紅天女を目標として掲げた姫川亜弓。
施設の慰問劇「美女と野獣」では自ら三枚目の端役を志願。
おどけた使い魔を見事に演じ話題となった。
そのビジュアルは完璧なブラックデビル。

そしてさらに演技の幅を広げるために挑むのは
「王子とこじき」の二役だった。

あらすじ

貧民窟の少年・トムは日々の生活や食べ物にも困る生活。
酒飲みの父親は働かず、トムは物乞いをさせられていた。
そんなある日、宮廷を一目見ようと鉄柵を登っていたところを衛兵に捕まってしまう。

一方エドワード王子は日々の退屈な生活に飽きはて、
外界を見てみたいと望んでいた。
紛れ込んだトムに興味を持ち話を聞こうとする。
捕まったトムの服を着てみるとエドワードとトムはうりふたつ。
一方のトムは風呂に入れられ、着替えると王子とうりふたつ。

こうして身分の違う二人が入れ違ったのだった。

演技派として目覚めた姫川亜弓

これまで姫君や令嬢役などが多かった姫川亜弓。
当初は王子のフィアンセの姫役としてキャスティングされていたところを
前回のブラックデビルに味をしめたのか、今回は王子とこじきの二役に志願。
演技の幅を広げるべくその難役に挑戦した。

しかしその演技へのアプローチがすごい。
というかちょっとずれている。

  1. 稽古初日に自慢の髪を化粧室で切り、くつずみを塗ったくりこじきの扮装。稽古には若干の遅刻
    髪は家で切ってこい。そして遅刻すな。
  2. 格闘シーンでは本気の稽古。しかも納得がいかずに何度も稽古を中断し、やり直す。共演者はその力いっぱいの芝居にびびる。
    主役とはいえ、全体の流れを止めるのはいかがなものか。
  3. それでも納得がいかない。「一応うまくできてた」とフォローした共演者を「一応なんてイヤよ」と一喝
    そんなんやから友達おれへんねん
  4. マヤが紅天女候補であることを知り、闘争心を燃やす。その結果路上でホームレス体験。マヤに見つかりニヤリと笑う。
    あえてマヤの目につくところでやっていたフシがある

まあ何れにしても妥協を許さない演技への取り組み方ではある。
稽古中は明らかに男性俳優の見事なソバットを食らっている。
これまで原作や脚本、そして姫川亜弓自身のイメージの沿った人物を演じてきたわけであるが、今回は真逆の役。
その役に徹底的に向き合ったのだった。

そして本番。
観客の中には姫川亜弓目当てで来た親子もいるよう。
なかなかの知名度である。

しかし汚いこじきで現れた亜弓に観客は幻滅。
ただでさえガキだらけの会場は保育園と化してしまった。

完全ビハインドになった劇場。
しかし突然舞台を降り、観客相手に物乞いの芝居。
客いじりというライブで子供達を味方につけ、
劇場の空気を完全にホームに変え、
そして美しい王子への早替えで子供達をさらに魅了したのだった。

そのあとは姫川亜弓ショー。
間をもたせぬ早替えとキャラクターの演じわけで
子供達は完全に芝居の世界に没頭。
関係者や記者をも唸らせる演技。

従来のイメージを覆す演技派としての評価を得て、
王子とこじきは大成功。

秋には再演が決定し、TV中継も入るというほどのマスコミの熱狂ぶりであった。

謎が多い劇団オンディーヌの実情

今回のこの「王子とこじき」
劇団オンディーヌで稽古が行われていることから
劇団オンディーヌ出演と思われる。

しかし今回小野寺氏は登場しない。
彼ほどの大物となると、子供相手の芝居の演出などしないということか。
それともそもそも、演出をしないのか。

子供相手とは言えフジナガ製菓提供。
「フジナガホール」なる不動産を所有していることからも
日本でもトップクラスの製菓会社であろう。
そのフジナガ製菓が主催しているのだから立派な商業演劇である。
やはり小野寺氏の政治的手腕のおかげであろうか。

当初亜弓は姫役としてキャスティングされていたということだが、
スポンサーサイド=フジナガ製菓の要望であろうか。

しかし王子とこじきの二役を志願。
主役とは言え、姫川亜弓とは言え、
イメージの異なるキャスティングにスポンサーは異を唱えなかったのか。
そしてその役者一人の個人的志望を通せるほど、
姫川亜弓はオンディーヌにて特別扱いされているのであろうか。

本番中アドレナリンが出まくっているとはいえ、
衣装スタッフへの態度はあんまりよろしくない。

劇中では国王役や侍従長役のベテラン、
トムの父親役の中堅どころといった役者陣が出演している。
彼らはこの「姫川亜弓アワー」と化している事実をどう思っているのか。
将来的に間違いなく売れるから、今のうちに仲良くなろうという魂胆か。
そして今回桜小路優は出演しているのかいないのかすらよくわからない。

とまあ、劇団オンディーヌはつくづく謎だらけである。

紅天女の道をつかむ

しかしこの「王子とこじき」
紅天女を目指している姫川亜弓にとっては大きな転機となる。

なぜなら紅天女・月影千草がそのTV中継を見ていたからだ。
入院中、絶対安静にもかかわらず、
ロビーのテレビに食いつき、ハアハア言いながらニヤリと笑う。
月影先生はこの時、亜弓の紅天女としての素質を確信したにちがいない。

これまでは
「かつての弟子、姫川歌子の娘が子役上がりで
なかなかの美貌を持っていて、そこそこ芝居もやりよる」

くらいの感想だったであろう。
しかしこの舞台をきっかけに、
姫川亜弓は演技派としての道を切り開いただけでなく、
紅天女・月影千草に、紅天女を目指す資格ありと認められたのである。

亜弓はかつてマヤを評して

「あの子が追いついてくる」
「上がっていらっしゃい」

などとあくまでも自分が先を行っているというスタンスであったが、
皮肉なことにも亜弓は紅天女レースにおいては
やっとマヤと同じ土俵に立ったに過ぎなかったのであった。

まとめ

王子とこじきの二役を演じ、
子供を中心とした客層を完膚なきまでに魅了した姫川亜弓。

しかしその頃北島マヤは、
また違った客層を相手に芝居をしていたのであった。

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