「たけくらべ・劇団オンディーヌ」ガラスの仮面・劇中作品データ
2016/09/24
演劇コンクール全国大会・東京地区予選
原作・樋口一葉
出演:
美登利・姫川亜弓
信如・桜小路優
その他 劇団オンディーヌのメンバー
演出:小野寺一
劇場:公会堂
主な観客:
審査員・評論家多数・速水真澄・つきかげの一部メンバー・その他観客多数
演劇コンクール全国大会東京地区予選。
劇団オンディーヌは樋口一葉原作の「たけくらべ」を上演する。
描写では劇団つきかげが「たけくらべ」を上演することを知り、あえて同じ作品をぶつけた様子。
しかも最終日同日に上演日を設定し、つきかげの本番会場での稽古をできないようにするなど、
つきかげを潰すための策謀を張り巡らせる。
多くのスターを輩出したオンディーヌの実力、
主演の美登利を演じる姫川亜弓のネームバリューもあって
優勝候補の筆頭と評価される中、
マヤと亜弓が同じ作品、同じ役で初めてぶつかることになる。
超本格正統派・姫川亜弓の美登利
「彼女が舞台に出るだけでパッと空気が華やかになる」
そう評される姫川亜弓の演技は完璧なものであった。
稽古初旬にしてあの小野寺氏をもって
「美登利そのものだ」
と言わしめ、
本番でも数多くの審査員をうならせる演技力。
観客も原作からそのまま出てきたような美登利に酔いしれ、
クライマックスでは劇中にもかかわらず歌舞伎ばりのスタンディングオベーションが巻き起こる。
当の亜弓は本番直前にもマヤを挑発する余裕。
そして舞台袖では
「見ていらっしゃいマヤ
たけくらべの美登利がどんなものか見せてあげる
この私の実力のほどを思い知り。打ちのめされるがいいわ!
私の後に同じ役を演じることがどんなにみじめなことか
私にはかなわないのだとはっきりとわからせてあげる。」
と徹底的にマヤを意識している。
演技は完璧なのに、演技のモチベーションの方向性が間違っているのが残念。
しかもこのあとマヤの実力のほどを思い知るのだから皮肉なものである。
これまではマヤを何となく気になる存在として意識していたのだが、
ついに現実に戦う相手として認めてしまったきっかけでもある。
そしてこのマヤへの対抗心が時に亜弓を成長させ、
そして亜弓を苦しめるのだから皮肉と言える。
しかしこの亜弓さんが稽古前に読んだ「たけくらべ」。
なぜか表紙は横書き。
絵本か何かだろうか。とても気になる。
相手役としてのキャリアを積み上げていく桜小路優
オンディーヌの男優のホープ・桜小路優。
これまではオンディーヌでの稽古や、マヤとのプライベートでの登場だったが、
舞台に立っているのは作中の描写では初めてである。
そもそも全国的な実力を誇るオンディーヌにおいて、準主役に抜擢されるほどの実力の持ち主。
舞台ではそつなく無難にこなし、好演の評価を得る。
作中ではマヤと亜弓という女優二人がメインになっているため、
女性主役の演劇が多く、男性の活躍の場は目立たない。
そんな中桜小路優は今回の信如役をかわきりに
「忘れられた荒野」のスチュアート役、
「紅天女(黒沼組)」の一真役と
見事に相手役俳優としてのスタートを切ったのだった。
演出家の小野寺先生が演出をしていない件
有名な演出家にして劇団オンディーヌ理事、 全日本演劇コンクールの役員も務めている小野寺一先生。 配役発表や稽古場、舞台稽古などに同席している描写もあるが、
具体的に何か演出している光景は見られない。
上述の亜弓の美登利を評する際にも遠巻きに稽古を見ており、
実際に役者のセリフや動きに何か注文をつけたりすることはなく、
演出に関しては放任主義なのだろうか。
彼の実力と才能が発揮されるのは舞台での外。
つきかげと同じ演目を、同じ日に設定し、
つきかげの舞台稽古をできないように小細工をするなど、
演出家というより、比較的政治家的な動きが目立ち、
さすがの速水真澄にもたしなめられるほど。
ただその陰湿なやり口があまりにも露骨であったため、
月影千草の意趣返しをくらい、珍しくうろたえる場面も。
サングラスの色が薄くなり、意外とつぶらな瞳を披露するという失態を演じている。
小野寺氏については今後も具体的な演出風景はなく、
つきかげを蹴落とすための活躍が中心となる。
しかしながらのちに紅天女の演出家候補に挙げられていることからも
演出家としての力量は確かなのだろうか。
それとも政治的手腕をもって演出家候補の地位を勝ち取ったのだろうか。
まとめ
以上、今回は劇団オンディーヌの「たけくらべ」について所見を述べました。
次回は劇団つきかげの「たけくらべ」についての予定です。