「若草物語」ガラスの仮面・劇中作品データ
2017/02/03
劇団つきかげ創立第1回公演
作・ルイーザ・メイ・オルコット
出演:
メグ・沢渡美奈
ジョー・青木麗
ベス・北島マヤ
スージー・水無月さやか
その他 春日泰子 劇団つきかげのメンバー
演出:田代先生
劇場:アート劇場
主な観客:姫川亜弓・姫川歌子・速水真澄・小野寺一
その他俳優・評論家・記者多数
伝説の大女優・月影千草が紅天女の後継者を育てるべく立ち上げた劇団つきかげ。
その記念すべき第一回公演である。
物語の解説は省略。
この公演ではストーリーの今後を決定づける様々なファクターが織込められている。
マヤの抜擢、特訓と成長。そのきっかけ付けに
つきかげの中でも上級者や経験者を差し置き、
未経験のCクラスからベス役に抜擢されたマヤ。
当然その抜擢を訝しみ、不満に思うものも多く、
特にマヤと同い年の水無月さやかは心中穏やかではない。
友人役にキャスティングされたものの虎視眈々と役交代を狙う。
演出家の田代先生も未熟なマヤよりもさやかを買っており、
月影先生に交代を申し出る始末だ。
そんな中月影先生は、マヤに一週間ベスとして生活することを指示。
学校にも行かせないという義務教育すら排除する鬼の指導。
結果としてベスの心境を見事つかみ、テストをクリアしてベス役を勝ち取る。
その後も月影先生のスパルタ指導はエスカレート。
「できそこないのベス」と罵り、鉄拳制裁まで発動。
そして熱病で瀕死の演技を会得するために一晩中雨に打たれるマヤ。
本番中も高熱でぶっ倒れそうになると、月影先生がバケツの水をぶっかける。
マヤの可能性、潜在能力を裏付けるとともに、
その秘めたる力を発露させるには何らかのイベントが必要というルールが定着するのである。
つまり類稀なる演技の才能を持っていながらも、
困難な状況に陥って初めてその力を発揮するという、
キン肉マンの火事場のクソ力
大空翼のドライブシュート
聖闘士星矢のセブンセンシズ
映画の時だけ見せるジャイアンの男気のようなものなのである。
そしてそれに味をしめた月影先生は今後もスパルタの方向性を強化していくのだった。
マヤをライバル視し始めた姫川亜弓
これまで数回、マヤと会い、その未熟ながらも底知れない演技力を感じていた姫川亜弓。
初めてマヤの芝居を通して見ることでその力をついに認める。
正確には「40度の高熱で舞台に立つ」という行為そのものへの恐れではあるが、
そうまでして役作りをする、舞台に立つその根性に大いなる恐れを抱くのだった。
ちなみに同席した母・姫川歌子もかつての師、月影千草への感情を吐露している。
彼女の場合は自身が目指し憧れた紅天女が、このメンバーの中から選ばれることへの不満ではあるが、
のちにマヤと共演する伏線にもなっている。
劇団つきかげ、終わりの始まり
満を持しての第一回公演であったが、同時に劇団月影崩壊のきっかけともなった。
紅天女上演権を狙う大都芸能の速水真澄は劇団つきかげを潰すことを目論み、
会場に多くの評論家やマスコミを招いた。
そして彼らを通じて劇団つきかげを酷評、出鼻をくじくとともに、
ゴシップを流すことで劇団の風評悪化と縮小に成功。
バックの青柳芸能プロの不信も招き、
劇団存続を危ぶませるのだった。
のちの全日本演劇コンクールでの敗退によりつきかげは後ろだてを失い、
実質解散に追い込まれることになる。
紫のバラの人初登場
上記のように劇団つきかげを追い詰めることに成功した速水真澄だが
一方では敗北感を感じ、演劇に情熱を燃やすマヤの姿に感動する。
そしてたまたま通りすがりの花屋で紫のバラを見かけ、
それをマヤたちの楽屋の前に手紙とともに置いていく。
これまでは冷徹だが男前の若社長だった速水真澄が
ロリコン化していくきっかけであり、
「紫のバラの人」という、虚像の誕生の瞬間であった。
しかしこのたまたま立ち寄った花屋に紫のバラがなかったらどのようなことになっていたのだろうか。
「青いひまわりの人」とか「白菊の人」とかだったらなんか気持ち悪い。
劇団内カーストの発生
紅天女育成のため多くの猛者が集まった劇団つきかげ。
中でもマヤと寄宿舎を同じくするメンバーはいずれも子役や学生演劇での実績を積み、
月影先生にスカウトされ集まったものばかりである。
東京出身の青木麗
北海道出身の沢渡美奈
長野県出身の水無月さやか
福岡出身の春日泰子
麗と美奈は若草物語においてメインの四姉妹にキャスティングされたが、
さやかはマヤに狙っていたベス役を奪われる。
野心的な一面を見せ、密かにベスのセリフを覚え、一人特訓をするも
マヤの才能に圧倒され、その実力を認めざるをえない。
今後麗は男装の麗人的なキャラクター、
美奈はクールな美女キャラクターとして活路を見出すが、
さやかはマヤと同い年ということもあり、キャラも若干かぶるせいか
今後影が薄くなっていく。
そして極め付けは春日泰子。
今作においては何役なのかすらわからない。
寄宿舎での特訓の際もメインキャストの代役にすらならず、
早く多数と照明係を担当。
寄宿生の中で最も影が薄い存在となってしまう。
いずれも実績を買われ、授業料免除、寄宿舎入りを認められた実力者にもかかわらず、
劇団創設数ヶ月でその差は歴然。
月影先生に見出されたにもかかわらず、マヤの登場により月影先生の興味は向けられることはない。
マヤの才能が圧倒的なのか。
飼い殺しにする月影先生が悪いのか。
それとも他の四人はハナから噛ませ役だったのか。
厳しい演劇の世界の縮図である。